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仕事を終え、手鏡でメイクを整え、赤いベロアのようなリップを引き直してからクラブへ。一杯のウィスキー。フロアで視線が交差する。深夜の2時。彼の耳元でささやいた。「また今度ね」。

トップ｜ブラックペッパー、ジンジャー、マンダリン
ボディ｜ジャスミン（モロッコ産）、チャツネ、オレンジフラワー
ベース｜カシュメラン、パチョリ（シンガポール産）、アンバーウッド

パフューマー：ヴィオレーヌ・コラ

ストーリー
決まって彼女は、毎夕オフィスで夜遊びのための身支度をはじめる。自宅に帰る時間なんてもったいないから。 その日の気分にあわせてメイクを直す。赤いベロアの口紅、たまにボルドーのことも。 髪をとかしつけて、ハンドバッグからネックレスを取り出す。 わずかに開いた白いシャツの胸元が彼女の曲線の美しさを強調する。目元に少しだけブラックの色味を加えた。オフィスのドアをバタンと閉じて、かかとで歩道を踏みならしながら歩く。毎週木曜日、彼女はコンコルド広場のクラブへと吸い込まれてゆく。なにか特別な期待を抱きながら。彼女は人を愛し、そして自らの人生も愛している。バーカウンターに空席を見つけ、タバコに火をつけながら、すばやくウィスキーをオンザロックで注文した。 暗がりの中、ふと人の気配を感じた。横を向くと、いつも見かける男性。二人の視線はこれまで幾度も交錯してきたが、決して言葉を交わしたことはなかった。 彼女は微笑み、立ち上がってフロアに出て一人踊り始めた。男性たちは彼女の注意を引くために列を作ってみるが、彼女は意味ありげな微笑を返すだけ。深夜の2時近く、ひとりのダンディーな男性が彼女の目に留まり、ダンスに誘われた。 彼女は少しだけ彼に身を委ねたが、「そろそろ帰るわ」と一言いって距離をとった。もう夜明けがすぐそばまできていたのだ。彼女は彼の耳元である言葉をささやいてから、踵（きびす）を返して出口へと向かった。。。「また今度ね（今夜じゃないわ）」。